今月の窓:団地・マンションの管理の低下と郊外市街地の縮減  鎌野 邦樹(早稲田大学法科大学院教授)
 1 人口減少・高齢社会と市街地の縮減
 2012年より土地総合研究所において「今後の土地問題を考える研究会」(代表・小林重敬・東京都市大学教授)が組織され、筆者もそれに参加する機会を得ている。そこでは、わが国の人口減少や高齢化を背景として、特に郊外の市街地が縮減することに伴い発生する空き地・空き家問題をはじめとする様々な問題を多角的・総合的に認識・検討し、解決の糸口を議論している(その一端として、本メールマガジン2013年8月号の小林教授の論考参照)。以下では、この問題を、郊外に立地され建築後30年以上を経過した団地(分譲マンションからなる団地)における建物の経年化と居住者の高齢化の中における「空き住戸」の問題に関連させて考えてみたい。
 2 団地型マンションをめぐる問題
 マンションにおける空き住戸の割合については、国土交通省の「平成25年度マンション総合調査」によると平均空室戸数割合(3ヶ月以上)は平均2.4%であり、マンション全体としてはそれほど髙くはないが、建築後30年以上のマンションにおいては2割超という調査もあり、築年数や地域によって偏りがあると思われる。
 空き住戸の増加がマンションの管理に与える影響については、①「理事会方式」を標準とするわが国のマンション管理における高齢化とあいまった管理能力の低下(理事のなり手不足等)、②建物の維持・改良・建替え等の合意形成力の低下、③管理費滞納者の増加、④防犯力・活力の低下、⑤マンション全体の資産価値の低下等が考えられる。そのうち、①および②の問題が最も深刻な問題である。すなわち、空き住戸を所有する区分所有者にとっては、一般的に、当該マンションの管理について積極的に参加しようとせず、また、維持・改良等のための費用を最低限に抑えようとすることから建物の維持・改良(耐震補強を含む)・建替え等に積極的ではなく、さらに、コスト増に繋がる「管理者管理方式」への移行や専門家の活用には否定的となる。
 3 管理の促進・活性化を担う組織とそれを実現するための仕組み
 マンションについては建物の共用部分と敷地を区分所有者が共有することから、区分所有者は、当然に団体(「管理組合」)を組織し、その団体の規約や集会の決議によって、反対者をも拘束する形で、建物と敷地の管理(建替え等も含む)を行う。ただ、このような基本的な制度はあるが、実際のマンション管理にあっては、上のような理由でその団体ないし組織が十分に機能しない、または、そのおそれが生じている。それを現実に活性化させるための仕組みないし制度が考えられなければならない。
 他方、市街地の空き地・空き家などの問題については、それらに対応できる組織が当然に存在するわけではない。したがって、まずは、自治体、地域住民、NPO等が連携して問題解決を担っていく組織の創設ないし形成が出発点となる。
 高齢化したマンションの管理を促進していくために、管理組合にとっては、まずは、現行制度の下での新たな管理の仕組みの開発が求められる。たとえば、管理組合が関与して、マーケットに乗らない空き住戸について、同一団地内の区分所有者が、遠隔地にいる親の呼び寄せや日常的に使用しない家財の保管場所のために取得・賃借できるための情報の提供をしたり、または、居住者のニーズに応じて、高齢者の生活支援サービスや子供の預かりサービス等に適う業者の取得・賃貸への橋渡しをすることが考えられる。次には、現行制度を改正して、高齢化したマンション等の実状に応じて、全員の合意によることなく、または多数決要件を緩和して、空住戸の取得・共用部分化、不要な共用部分・共用施設の処分、または建物の増築・減築・改良を可能とすることが求められる。
 以上の枠組みは、空き地・空き家の問題等を抱えつつ縮減していく市街地についても基本的に当てはまるであろう。つまり、この問題に取り組むために連携する組織が、まず、現行制度の下でも可能な新たな仕組みを開発し、次に、現行制度の下では達成できない必要・不可欠な仕組みについては、そのための制度(立法・条例等)を求めていくことが必要とされよう。
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